「会計関連の仕事をするなら、英語はできた方がいいですか?」
会計や経理のキャリアを考えている人からすると、割と気になるテーマだと思います。英語を勉強した方がいいとは聞くものの、日常業務でほとんど英語を使わない会社もあります。英語学習には時間がかかりますし、その時間を会計知識や実務経験の習得に使った方がいいのではないか、と考えるのも自然です。
私はオーストラリアで会計学を学び、現地の飲食企業で経理として働いた後、日本では監査法人、Big4の会計アドバイザリー、税理士法人の国際税務などを経験してきました。資格としてはUSCPA、CPA Australia、英語の方では英検1級やIELTS8.0を取得しています。
その経験から感じるのは、英語そのものがキャリアを作ってくれるわけではない一方、「会計×英語」という組み合わせは、仕事の選択肢をかなり広げてくれるということです。
会計職に英語は本当に必要なのか
最初に結論を言えば、すべての会計職に高い英語力が必要なわけではありません。
国内企業の経理として日本の会計基準で決算を行い、取引先も社内の関係者もほぼ日本人という環境であれば、英語を使わずにキャリアを築くことは十分可能です。英語ができないから会計職として成功できない、という話ではありません。
一方で、選択肢を「今いる会社の中」ではなく、転職市場や海外まで広げて考えると意味が変わってきます。
外資系企業、海外子会社を持つ日本企業、海外親会社を持つ日本法人、Big4、国際税務、海外勤務など、英語と会計の両方が関係する仕事は存在します。
つまり英語は、すべての会計職に必要な「必須資格」というより、会計という専門性を使える市場を広げるための道具だと私は考えています。
海外経験に後から会計がつながった
私自身のキャリアは、「将来グローバルな会計専門家になる」という立派な計画から始まったわけではありません。
オーストラリアに長く住み、現地で会計学を学び、飲食企業で経理の仕事をしました。その時点では、その経験が後に日本で監査、会計アドバイザリー、国際税務へつながっていくところまで明確に見えていたわけではありません。
ただ、振り返ると海外で英語を使って生活し、会計を学び、実際に経理として働いた経験が、その後の選択肢の土台になっています。
帰国後に日本でキャリアを作る際にも、「英語ができます」だけではなく、「英語環境で会計を学び、経理としての実務経験があります」と説明できます。
ここにはかなり大きな違いがあります。
英語単体より、専門性との掛け算が重要だった
英語を勉強していると、TOEICや英検などのスコアそのものを上げることが目的になりやすいと思います。私自身も英検1級を取得していますし、資格やスコアには一定の意味があると思っています。
ただ、キャリアという観点では「英語ができる」だけより、「英語で何ができるか」の方が重要です。
私の場合、その「何ができるか」に当たるものとして「会計」を選択しました。
会計の基礎がある。監査の実務経験がある。税務を扱える。財務諸表を読める。そのうえで英語が使える。
この状態になると、英語は単独の能力ではなく、専門性を別の国・会社・案件でも使うためのインフラになります。
これは会計に限った話ではありません。エンジニアでも、営業でも、マーケティングでも同じでしょう。英語だけをキャリアの中心に置くのではなく、自分の専門性に英語を掛け合わせる方が、仕事との接続は考えやすくなります。
「会計×英語」で広がった3つの選択肢

1.海外で働くという選択肢
最も分かりやすいのは海外です。
私はオーストラリアの現地企業で経理として働きました。もちろん、海外で働くためには英語だけでなく、ビザ、現地で求められる経験、採用市場などさまざまな条件があります。そのため「英語と会計を勉強すれば海外就職できる」と単純化するつもりはありません。
それでも、会計という職種には国をまたいで共通する部分があります。売上、原価、人件費、キャッシュフロー、月次決算といった企業活動そのものは国が変わっても存在します。
そこに英語が加わることで、日本だけではなく海外の求人も「自分とは関係のない世界」ではなくなります。
2.日本国内でも国際的な仕事を選べる
英語を活かすために、必ず海外へ移住する必要があるわけではありません。
私は日本に帰国してから監査、会計アドバイザリー、そして国際税務を経験しています。特に国際税務のように国境をまたぐ取引を扱う領域では、日本にいながら海外との接点を持つことができます。
外資系企業やグローバル企業を含めれば、日本国内にも英語と会計を組み合わせられる仕事はあります。
海外経験を積んだからといって、帰国後にその経験を捨てる必要はありません。むしろ日本で身につけた専門性と組み合わせることで、海外経験の価値が後から大きくなるケースもあると思います。
3.転職時に説明できるキャリアの軸ができる
転職を何度か経験して感じるのは、一つひとつの資格や勤務先だけではなく、「これまで何を積み上げてきた人なのか」を説明できることが重要だということです。
たとえば、USCPAだけを見ると資格です。英語だけを見ても語学力です。海外勤務だけなら海外経験です。
しかし、「海外で会計を学び、現地企業で経理を経験し、USCPAを取得し、日本では監査や国際税務を経験した」とつなげると、一つのストーリーになります。
個々の経験が突然変わるわけではありません。組み合わせることで意味が変わるのです。
USCPAと英語の関係も同じだと思う
USCPAについても、資格を取っただけでキャリアが自動的に変わるわけではありません。
以前の記事でも書いている通り、資格取得後にどのような実務経験を積むかは重要です。
一方でUSCPAは英語と会計が最初から組み合わさっている資格です。そのため、会計と英語の両方をキャリアに取り込みたい人にとっては、一つの分かりやすい選択肢だと思います。
ただし、「USCPAを取れば英語が話せるようになる」というものではありません。試験に合格するための英語と、会議で意見を伝える、メールを書く、海外の同僚と仕事を進めるといった実務上の英語には違いがあります。
資格取得と実際に英語を使う経験は、分けて考えた方がいいでしょう。
英語力をキャリアの価値に変えるために意識したいこと

では、会計職として英語を勉強するなら、何を意識すればいいのでしょうか。
英語力そのものを上げることと並行して、「英語を使って自分の専門性を深める機会」を増やすことが良いと思います。
たとえば英文の財務情報を読む、英語で会計を学ぶ、海外の同僚がいる仕事に手を挙げる、海外案件に関わる、外資系企業やグローバル企業も転職先として見る、といった方法です。
重要なのは、英語学習と仕事を完全に分離せず、英語に触れられるチャンスには積極的に飛び込む勇気を持つこと。
最初は「失敗するんじゃないか。。。」という恐れは誰にでもあります。
しかし、現場で体験できる英語でのコミュニケーション経験は、教科書でいくら勉強しても学べないことがたくさんあり、後にそういった経験が英語の実用力や自信を高めてくれることにつながります。
英語を勉強してからいつか仕事で使おうとすると、いつまでも準備期間が続くことがあります。それよりも、現在の英語力でできる範囲から実務と接続した方が、「自分には何が足りないのか」も見えやすくなります。
英語より実務経験を優先した方がいい時期もある
一方で、英語を過大評価するのも違うと思っています。
たとえば会計実務をほとんど経験していない段階で、英語のスコアだけを延々と上げ続けても、それだけで会計職としての市場価値が大きく上がるとは限りません。
会計職としてキャリアを作るのであれば、決算、監査、税務、財務分析など、何らかの実務能力を身につけることも必要です。
私自身、海外経験や英語だけで現在のキャリアができたとは考えていません。監査法人などで実務経験を積んだからこそ、USCPAや海外経験との組み合わせが強くなりました。
だから、「英語か実務か」という二択ではなく、キャリアの段階に応じて比重を変えるのが現実的です。
英語はキャリアの目的ではなく、選択肢を増やす道具
英語を学んでいると、TOEIC何点、英検何級、どれくらい話せるか、といった分かりやすい指標に意識が向きます。
もちろん、それらも努力の成果です。ただ、キャリアという長い時間軸で見ると、本当に重要なのは「その英語を使って何ができるようになったか」だと思います。
私にとって英語は、オーストラリアで学び、働くための道具でした。その後はUSCPAや会計実務と結びつき、日本で監査や国際税務などの仕事を選ぶ際にもキャリアの一部になりました。
今振り返ると、「英語ができるから価値がある」というより、英語があったことで、会計という専門性を使える場所が増えたという表現の方が近いです。
会計を勉強していて英語にも興味がある人は、「英語を勉強するべきか」だけを考えるのではなく、「会計×英語になったとき、自分はどんな仕事を選べるようになりたいのか」まで考えてみるといいと思います。
資格、英語、海外経験、実務経験。それぞれは単体では一つの要素にすぎません。しかし、時間をかけて組み合わせていくと、自分にしかないキャリアになっていきます。一歩ずつ頑張りましょう!


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