経理から監査法人へ転職して感じたこと|両方を経験して分かった仕事とキャリアの違い

USCPA

現在、経理の仕事をしています。監査法人への転職に興味はあるのですが、どんな経験や経歴が求められるのでしょうか。今の経理経験は活かせるのか、転職すると仕事やキャリアがどう変わるのかも知りたいです。

こういった悩みに答えます。

☑️ この記事のポイント

  • 経理と監査法人では、同じ会計を扱っていても「数字を見る立場」が大きく異なる
  • 経理経験は、監査法人でクライアント側の業務を理解するうえで活かせる
  • 監査法人では、複数企業のビジネスや会計を横断して見る力が身につく
  • USCPA取得後に監査法人へ行くべきかは、「次にどんな実務経験を積みたいか」で判断する
  • 経理と監査は優劣ではなく、身につく経験が異なり、組み合わせることでキャリアの幅が広がる

私はオーストラリアの現地企業で経理として働いた後、日本に帰国して監査法人へ転職しました。

同じ「会計」に関わる仕事ではありますが、実際に両方を経験してみると、経理と監査では仕事の見え方がかなり違いました。

経理では、自分が会社の数字を作る側にいます。一方、監査では企業が作った数字を外部から確認する側になります。

その後、会計アドバイザリーや国際税務も経験しましたが、振り返ってみると、監査法人で身につけた「会社の数字を体系的に見る力」は、その後のキャリアにもつながっています。

この記事では、経理から監査法人へ転職した実体験をもとに、仕事内容の違い、監査法人で得たもの、逆に経理経験が役立ったこと、そして転職を考える際に知っておきたいことを書いてみます。

経理から監査法人へ転職するという選択

経理と監査は、どちらも財務諸表や会計に関わる仕事です。

ただ、実際の立場は大きく違います。

経理では、日々の取引を記録し、月次や年次の決算を行い、最終的に会社の数字を作っていきます。

監査では、その会社が作った財務情報について、会計基準に沿って適切に作成されているかを検討します。

つまり、経理では「作る側」、監査では「見る側」になります。

私はこの両方を経験したことで、会計に対する理解がかなり立体的になったと感じています。

最初に経験したのはオーストラリア企業の経理だった

私の会計キャリアの出発点は、日本の監査法人ではありません。

オーストラリアで会計学を学んだ後、現地の飲食企業で経理として働きました。

飲食企業だったため、店舗があり、売上があり、食材の仕入れがあり、人件費が発生します。

当時は、それが後から監査の仕事にどうつながるかまで考えていたわけではありません。

しかし、結果的にはこの事業会社側の経験が、監査法人へ移った後にもとても役立ちました。

経理と監査では、会計を見る方向が違った

監査法人へ入って最初に感じた違いの一つが、数字を見る方向でした。

経理として働いていると、自分たちは数字を作る側です。

たとえば売上が発生し、仕入れを計上し、人件費を記録し、それらを集計して月次決算を作ります。

一方、監査では完成した数字だけを見るわけではありません。

その数字がどのような取引から生まれ、どのようなプロセスを経て財務諸表に反映されているのかを確認していきます。

同じ売上という数字でも、「売上はいくらだったか」だけではなく、その売上がどのように認識され、記録され、財務諸表まで流れてきたのかを見ることになります。

この視点の変化は、私にとってかなり大きなものでした。

一社の会計から、複数企業の会計を見る仕事へ

事業会社の経理と監査法人のもう一つの大きな違いは、見る会社の数です。

経理では、基本的には自分が所属する会社のビジネスを深く理解していきます。

これは経理の非常に大きな強みです。会社の業務フローや数字の癖を知り、時間をかけて事業そのものへの理解を深められます。

一方、監査法人では複数の企業を見る機会があります。

会社が変われば、ビジネスモデルも違います。売上の作り方も、重要になる勘定科目も、業務プロセスも違います。

そのたびに「この会社はどのように利益を生み出しているのか」「どこに会計上の重要な論点があるのか」を考えます。

一つの会社を深く見る経験と、複数の会社を横断して見る経験。

私は両方を経験できたことに意味があったと思っています。

経理経験が監査法人で役立ったこと

経理から監査へ移ったからといって、それまでの経験がリセットされたわけではありません。

むしろ、経理側の仕事を経験していたことで理解しやすかったこともありました。

監査でクライアントに資料を依頼するとき、その資料は誰かが作っています。

月次決算や年度決算の時期には、経理担当者自身も多くの業務を抱えています。

自分が経理側にいた経験があると、数字の裏側に実際のオペレーションがあることを想像しやすくなります。

これは専門知識とは少し違いますが、クライアントと仕事をするうえでは大切な感覚だったと思います。

監査法人で得た一番大きなものは、会計を見る土台だった

私の場合、監査法人で働いた後、会計アドバイザリー、国際税務へと仕事を広げていきました。

現在振り返ってみると、監査法人で得た一番大きなものは、特定の監査手続そのものだけではありません。

財務諸表がどのように構成されているのか。会社の業務プロセスと会計がどうつながっているのか。数字を見るときに、どこにリスクがありそうか。

そうした「会社の数字を見るための基本的な思考」を繰り返し使ったことが、その後の仕事にもつながっています。

会計アドバイザリーへ移っても、税務へ移っても、企業の財務情報を見るという土台そのものがなくなるわけではありません。

キャリアを後から振り返ると、当時は別々に見えていた経験がつながっていることがあります。

私にとって監査経験は、その一つでした。

USCPAを取ったら監査法人へ行くべきなのか

ここで、USCPAを勉強している人が気になるであろう点にも触れておきます。

USCPAを取得したら、監査法人へ転職するべきなのでしょうか。

私は、必ずしもそうではないと思っています。

監査法人は会計の実務経験を積む一つの有力な場所ですが、USCPA取得後のキャリアは監査だけではありません。

経理、財務、会計アドバイザリー、内部監査、外資系企業など、資格や英語を活かせる仕事はほかにもあります。

重要なのは「USCPAを取ったから監査法人へ行く」と決めることではなく、その次にどんな実務経験を身につけたいのかを考えることだと思います。

財務諸表を体系的に理解したい、さまざまな企業を見たい、会計専門職としての基礎を作りたいという目的があるなら、監査法人は検討する価値のある選択肢になります。

一方で、事業会社側で経営に近い経験を積みたいのであれば、経理や財務でキャリアを深める方が目的に合う場合もあります。

「どちらが上か」ではなく、身につくものが違う

経理と監査を比較すると、「どちらの方がキャリアとして有利なのか」という話になりがちです。

しかし、実際に両方を経験した立場からすると、この比較は少し違うと感じます。

経理には、事業の中に入り込み、一つの会社の数字を継続的に作っていく経験があります。

監査には、独立した立場から財務情報を検証し、複数企業を見る経験があります。

身につくものが違います。

だからこそ、転職を考えるときには会社名や肩書だけではなく、「次の数年間で何を経験したいか」を考えた方がいいと思います。

経験は後から徐々に活きてくる

オーストラリアの飲食企業で経理をしていた頃、将来日本の監査法人で働き、その後会計アドバイザリーや国際税務まで経験することを完全に設計できていたわけではありません。

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一つだけを見れば、それぞれ別々の経験です。

しかし、キャリアが長くなるにつれて、それまで身につけたもの同士が組み合わさる場面が増えてきました。

だから私は、転職するときに「今までと完全に同じ仕事かどうか」だけで判断する必要はないと思っています。

これまでの経験を持ったまま、新しい視点を追加できる転職もあります。

私にとって、経理から監査法人への転職はまさにそういう転職でした。

まとめ|経理経験と監査経験は、別々ではなく組み合わせられる

経理から監査法人へ転職すると、同じ会計を扱っていても仕事を見る方向は大きく変わります。

経理では会社の中から数字を作り、監査では外からその数字を見る。

私は両方を経験したことで、会計を一方向からではなく見ることができるようになりました。

そして、その後に会計アドバイザリーや国際税務へ仕事を広げたときにも、それまでの経験が完全に消えることはありませんでした。

USCPA取得後の進路や、経理から監査法人への転職を考えている人にとって重要なのは、「監査法人へ行くこと」自体を目的にすることではないと思います。

そこで何を身につけ、その経験を次にどうつなげたいのか。

その視点を持って転職先を考えることが、長いキャリアでは大切だと感じています。

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