USCPA取得後は転職すべき?今の職場で経験を積むという選択肢

朝の都市を望む窓辺に、ノートとパソコンを置いた仕事机のイメージ USCPAキャリア

USCPAを取得したら転職に有利になると聞きました。今の職場でも会計の仕事はできていますが、このままで資格を活かせるのか、別の職場へ移った方が成長できるのか迷っています。

 

こういった悩みに答えます。

 

☑️この記事のポイント

  • USCPA取得は選択肢を考えるきっかけになるが、転職の時期は慎重に考えた方が良い
  • 同じ職場でも、担当する範囲や任され方が変われば、積める経験は変わる
  • 職場を残るか移るかを比べる前に、次に身につけたい経験を具体的にする
  • 仕事内容だけでなく、相談できる相手や働き続けられる条件も見る
  • 今の職場に残る場合も、何を経験したいかを決めておく

 

私はUSCPAとCPA Australiaを取得し、経理、監査、会計アドバイザリー、国際税務と、立場を変えながら会計に関わってきました。

転職によって仕事の見え方が変わった経験は多々あります。ただ、それを理由に「資格を取ったら、今の会社を出た方がいい」とは考えていませんでした。

資格を取得すると、それまで見ていなかった求人が気になったり、同じ資格を持つ人の職歴と自分を比べたくなったりすることもあると思います。

そのときに考えたいのは、会社を変えること自体より、これからどんな経験を積みたいのかです。今回は、特定の職種への転職を勧めるのではなく、今の職場に残る選択も含めて、資格取得後の働き方をどのように考えると、その後のキャリア形成がうまくいきやすいかをお伝えできればと思います。

資格を取ったことと、転職する理由は分けて考える

USCPAを取得するために、時間もお金も使った。その努力を仕事につなげたいと思うのは自然なことです。

ただ、「せっかく取ったのだから転職しないともったいない」と考えると、資格を活かす方法を少し狭くしてしまう気がします。

資格で学んだことを使う場面は、転職先にだけあるわけではありません。今まで担当していなかった決算業務に関わる、他部門との数字のやり取りを引き受ける、会計上の論点を自分で調べて説明する。今の職場で仕事を広げられる可能性もあります。

一方で、担当範囲や組織の事情から、希望する経験を積むことが難しい場合もあるでしょう。

だから、まずは「合格したから動く」のではなく、「何を経験したいから動くのか」を考えたい。その答えがはっきりすると、転職先を見るときも、今の職場に残るか考えるときも、判断の軸を持ちやすくなります。

同じ仕事を続けることが、いつも停滞とは限らない

毎月、同じように決算を行っていると、仕事が変わっていないように感じることがあります。

でも、同じ業務名でも、中身まで同じとは限りません。教わった手順をそのまま行う段階と、数字の変化を見て確認すべき点を考える段階では、求められる力が違います。

たとえば、ある勘定科目の残高を照合する仕事を考えてみます。最初は差額を見つけて上司に報告する。次には、その差がどの取引から生じたのかを調べる。さらに、翌月も同じ確認が必要になる理由まで整理する。これは一般的な例ですが、同じ担当業務の中にも、経験の深まり方はあります。

大切なのは、何年続けたかだけでなく、自分で考えて任せてもらえる範囲が増えているかです。

同じ会社にいることを、そのまま停滞と結びつける必要はありません。逆に、忙しく働いていても、できることが広がっていないと感じるなら、その感覚は一度丁寧に見てみる価値があります。

今の職場で、次に経験できることは何か

窓辺のオフィスで、女性と男性の同僚が資料を見ながら話し合うイメージ

現在の職場に残ることを考えるなら、今ある仕事だけでなく、その先にどんな担当や役割があるのかも見ておきたいところです。

年次決算まで関わりたいのか。予算と実績を継続して見たいのか。自分の作った資料を使って、事業部門と話すところまで経験したいのか。目指すものによって、確認すべき機会は変わります。

ここで「もっと成長したい」とだけ伝えても、周囲は何を任せればよいか判断しにくいと思います。たとえば「今の集計業務に加えて、来期は差異の説明まで担当したい」と言えれば、仕事の相談として具体的になります。

希望を伝えれば必ず実現するわけではありません。それでも、担当できる時期や必要な準備がわかれば、残ることを現実的に検討できます。

反対に、やりたい仕事がその部署に存在しないなら、努力の仕方だけで解決できる話ではないかもしれません。社内で役割を変える余地があるのか、会社の外に機会を探す方がよいのか。その違いを確かめたいと思います。

何を担当するかと同じくらい、誰から学べるかも大きい

実務経験の価値を考えるとき、担当業務の名前に目が向きがちです。ただ、その仕事をどんな人と進めるのかによっても、学べることは変わります。

USCPA取得後に実務経験を積むメリットでも、実務の中でレビューを受けることに価値を感じてきたことを書きました。自分の結論を経験豊富な上司や先輩に見てもらえると、確認が足りなかった点や、説明に必要な前提が見えてきます。

難しい仕事に触れるだけでなく、なぜその見方をするのかを聞ける。次は自分で考える機会がある。そうした環境は、資格の知識を実務に結びつけるうえで大切だと思います。

もちろん、何でも教えてもらえる職場を待つという意味ではありません。まず自分なりに調べ、考えを持って相談することは必要です。

そのうえで、今の職場には相談できる人がいるのか。判断の過程を知る機会があるのか。業務の華やかさだけでは見えにくい、こうした部分も残る価値になると思います。

環境を変える意味があるのは、得たい経験との距離が大きいとき

一方で、今の職場でできることを探し続ければよい、とは限らないのも事実です。

たとえば、事業会社の中で数字を作る経験を積んできて、次は外部の立場から財務情報を見る仕事をしたいと考えるなら、同じ担当を続けるだけでは得にくい視点があります。

私の個人的な経験になりますが、経理から監査へ移ったことで、数字を作る側から、その数字を確認する側へ立場が変わり、得られる経験の種類が変わったことを実感しました。この違いは、経理から監査法人へ転職して感じたことでも書いています。

このように、やりたい仕事と今の役割の間に構造的な違いがあるなら、転職は具体的な選択肢になります。

自分が求めるのは、新しい分野なのか、担当範囲の拡大なのか、それとも働く環境の改善なのか。理由を分けてみると、今いる場所で変えられることと、環境を移した方が近づけることが見えてきます。

転職先の名前より、入った後の仕事を具体的に見る

Big4など、勤務先の名前に価値を感じることはあると思います。私自身も、その環境で実務を経験してきました。

ただ、会社名や職種名だけでは、入社後に自分が何を担当するかまではわかりません。「会計に関われる」という説明でも、実際には資料の準備が中心なのか、論点を検討する機会があるのかで、積める経験は違ってきます。

求人を見るときには、最初に任される業務、その後に広がる役割、チームの中での担当範囲を知りたいところです。面接でも、関心のある仕事にどう関われるのかを、具体的に聞く価値があります。

ここで気をつけたいのは、今の職場の現実と、転職先の理想像を比べないことです。今の仕事には不便な点が見えている一方、外の職場には、まだ見えていない日常があります。

わかっていることと期待していることを分けてみる。そのうえで比較した方が、「入れば自然に経験が積めるはず」という思い込みを減らせると思います。

年収や働く時間も、経験を積み続けるための条件になる

成長できる仕事を選ぶことは大切です。ただ、それだけを理由に、生活の条件を後回しにする必要はありません。

年収、通勤、忙しい時期の働き方、家族との時間。人によって、今優先したいものは違います。その時その時で、仕事以外にも考えなければならないことが増えることもあります。

学べる環境でも、無理が続いて働き続けられなければ、思っていたように経験を積めないこともあります。反対に、条件が安定していることで、新しい仕事を覚える余裕を持てる場合もあると思います。

年収を気にすることと、成長を大事にすることは、必ずしも対立しません。どの条件が自分にとって必要なのかを、経験の中身と一緒に考えたいところです。

資格を取った努力を回収しようと急ぐより、その後も働き、学び続けられる選択かどうかを見る。長く会計の仕事を続けるなら、この視点も外せないと思います。

残ると決めたら、何を経験してから考え直すかを決める

木々とオフィスビルに囲まれた歩道を、夕方の光の中で歩く女性のイメージ

今の職場に残ると決めたとしても、それで今後のキャリアを考え終えたことにはなりません。

次の年次決算を経験した後に振り返る。新しい担当を引き受けたら、実際にどこまでできるようになったかを見てみる。期間だけでなく、経験する仕事を一つの区切りにすると、残った意味を確かめやすくなります。

たとえば、差異分析まで担当したいと考えて残ったなら、集計の量が増えただけなのか、数字の背景を説明するところまで任されたのかで、振り返り方は変わります。

最初に考えていた機会が実現しなかった場合は、その理由も含めて考え直せばよいと思います。残るという一度の判断を、ずっと守り続けなければいけないわけではありません。

外部の求人や仕事を知ることも、すぐ応募するためだけではなく、自分がこれから積みたい経験を考える材料になります。今の職場に向き合うことと、外の選択肢を知っておくことは、同時にできることです。

キャリアは、一度の選択ですべて決まるわけではない

経理、監査、会計アドバイザリー、国際税務と経験してきましたが、最初からその後の進路をすべて設計できていたわけではありません。

以前の記事にも書いたとおり、後から振り返って、それまでの経験が別の仕事につながっていたと感じることは経験を積んでいくとよくあります。

なので、資格取得後の最初の選択を、唯一の正解として考える必要はありません。今の自分に必要な経験を考え、実際に働いてみて、次の選択を考える。その繰り返しでもよいはずです。

CPA Australiaのキャリア支援でも、強みや今後伸ばす能力を把握し、学習やキャリア形成につなげる考え方が紹介されています。資格を取った後にも、自分が何を身につけたいかを見直すことには意味があります。

誰かと同じ会社に入ることより、自分の経験がどう積み重なるかを見る。その方が、今いる職場の価値も、新しい環境へ移る意味も、落ち着いて考えられると思います。

まとめ|資格取得後に考えたいのは、次の会社より次の経験

USCPAを取得したからといって、すぐに転職するべきとも、今の職場で何年か働くべきとも、一概には言えません。

今の職場で経験を広げられるのか。学びたいことを知っている人がいるのか。反対に、希望する仕事との間に、環境を変えなければ埋めにくい違いがあるのか。

そのうえで、仕事内容と生活の条件を一緒に見ていく。残る場合も、何を経験してから考え直すのかを決めておくと、受け身で時間が過ぎることを避けやすくなります。

資格は、これからどんな仕事ができるようになりたいのかを考える材料として考えると、自分なりの活かし方に繋がりやすくなるのではないでしょうか。

「転職するか、残るか」を決める前に、まず次に積みたい経験を言葉にしてみる。そこから考えると、自分に合う選択が見えやすくなるのではないかと思います。

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