USCPA取得後に実務経験を積むメリット|知識を「仕事で使える力」に変える

USCPA

USCPAの取得後、実務経験から得られるメリットはたくさんあります。

たとえば、Big4で経験を積むなら「Big4出身」と職歴に書けること。転職市場で評価されやすくなること。そして、実務経験者という肩書がつくこと。これらも、その後のキャリアを考えるうえで、かなり大きなメリットだと思います。

勤務先の名前や、実務に携わってきた経歴が、自分の経験に関心を持ってもらうきっかけになる。その価値は、確かにあります。

ただ、自分がBig4で監査・税務の実務を経験して感じるのは、それ以上に大きいのが、資格で学んだ知識を「仕事で使える力」に変えられることです。

ブランドに加えて、そこで身につけた考え方や仕事の進め方が残る。自分にとって、長く活きるのはこの部分だと感じています。

試験で理解していたはずのことが、仕事になるとうまく使えない。何を調べればいいのかはわかっても、どこまで調べれば十分なのかがわからない。

自分もUSCPA取得後にBig4で監査・税務を経験し、「知っている」と「仕事で使える」の間には、思っていた以上に距離があると実感しました。

今回は、その距離を埋める実務経験について書いてみます。USCPA取得後の進路を考えている方にも、これから資格に挑戦する方にも、合格後にどんな経験を得たいかを考える材料として読んでもらえたらうれしいです。

資格試験で学ぶことと、実務で求められることの違い

資格試験では、基本的に問題を解くための条件が示されています。何を問われているかを読み取り、学んだ知識を使って答えを出す。

もちろん、試験にも判断を求められる問題はあります。ただ、実務では、その前提となる情報を揃えるところから始まることが少なくありません。

もらった資料だけで結論を出せるのか。説明と数字に食い違いはないか。追加で確認すべき相手は誰か。そもそも、最初に相談された内容が本当の論点なのか。

「答えを出す」前に、「何を確かめるべきか」を考える必要がある。この違いは大きいと思います。

たとえば、一般的な例として、ある取引の会計上の扱いを検討する場面を考えてみます。基準を知っていても、契約の内容や実際の取引の流れがわからなければ、当てはめることができません。

契約書を読む。担当者に確認する。別の資料と照らし合わせる。そのうえで、判断の根拠と、まだ確認できていない点を整理する。

実務で使える知識とは、基準を覚えていることに加えて、こうした確認や説明につなげられる知識なのだと思います。

Big4の実務で、自分が価値を感じた四つの判断力

監査と税務では、仕事の目的も、確認する内容も違います。それでも自分にとって、両方の経験を通じて重要だと感じた問いがあります。

1.この論点のリスクはどこにあるか

目の前に資料がたくさんあっても、すべてを同じ深さで確認するわけにはいきません。

どこに誤りが起きやすいのか。何を見落とすと結論が変わるのか。過去と同じように扱ってよいのか。

作業の前に、注意を向ける場所を考える。この視点があると、同じ資料を読んでいても、確認するポイントが変わってきます。

2.何を調べれば、結論を出せるか

わからないことに出会ったとき、関連しそうな情報を手当たり次第に集めるだけでは、時間がいくらあっても足りません。

足りないのは事実関係なのか。基準やルールの理解なのか。それとも、複数の考え方のうち、どれが今回の状況に合うかという判断なのか。

何がわかっていないのかを分けると、次に読む資料や、相談すべき相手が見えてきます。調べる力には、検索する前の整理も含まれていると思います。

3.どこまで深掘りし、どこで相談するか

実務で難しいのは、調べ始めることだけではありません。どの時点で判断材料が揃ったと考えるかも難しい。

気になる点をすべて追い続ければ、期限に間に合わなくなる。一方で、時間がないからといって、結論に影響する不明点を残すわけにもいきません。

今ある材料で言えることと、まだ言えないことを分ける。自分で考えたうえで、必要なタイミングで相談する。そうした進め方も、実務の中で身につけていくものだと感じます。

4.相手にどう説明するか

自分の中で理解できたとしても、それだけでは仕事は終わりません。クライアントにも、上司やチームのメンバーにも、判断の内容が伝わる形にする必要があります。

相手が知りたいのは、専門用語の詳しい解説よりも、「結局どういうことなのか」「何を確認すればよいのか」「次に何をする必要があるのか」かもしれません。

結論、理由、前提、残っている確認事項。それらを、相手が判断できる順番で伝える。

正しく考えることと、相手が使える形で伝えること。その両方があって、初めて仕事になる。これは会計や税務以外でも大切なことだと思います。

レビューを受けると、自分には見えていなかった問いがわかる

自分が実務経験の中で価値を感じたことの一つが、レビューを受けることです。

自分なりに調べて、整理して、これで説明できると思ったものを、経験のある人に見てもらう。すると、自分だけでは気づけなかった確認事項や、説明の足りない部分が見えてきます。

たとえば、レビューで考えるべき問いには、次のようなものがあります。

  • その結論は、どの事実を前提にしているのか。
  • 別の見方をした場合にも、その説明は成り立つのか。
  • 確認した資料から、そこまで言い切ってよいのか。
  • 引き継いだ人が読んでも、判断の経緯を追えるのか。

大事なのは、指摘された箇所を直して終わりにしないことだと思います。「なぜ、そこを確認する必要があったのか」まで考えると、次の仕事で自分から気づける可能性が高まります。

最初は、レビューを受けてから気づく。次は、提出する前に自分で確認する。その積み重ねで、少しずつ仕事の基準が変わっていきます。

知識を教えてもらうだけでなく、経験のある人が、何を気にして、どこまで確かめているかを見られる。これが、実務の現場で学ぶ大きな価値だと感じます。

期限の中で品質を揃える経験が、自分の仕事の基準になる

もう一つ、試験勉強とは違うと感じるのが、期限やチーム全体の進行を踏まえて仕事を仕上げることです。

自分の作業が終われば、それで完了とは限りません。その後にレビューがあり、追加確認があり、クライアントへの説明がある。自分の提出が遅れれば、次の人が使える時間も短くなります。

だからこそ、何を先に確認するか、どの段階で相談するか、いつレビューに出すかまで含めて考える必要があります。

ここでいう「期限の中で仕上げる」は、確認を省いて形だけ整えることではありません。結論に影響する部分を優先し、判断が必要な点を早めに共有し、必要な品質を確保する進め方を身につけることです。

難しい案件に触れることも、同じように価値があります。ただ、難しい仕事を担当したという事実だけでは、次に使える経験にはなりません。

どこで迷ったのか。何を確認したら前に進めたのか。自分の説明に何が足りなかったのか。

そうしたことを振り返っておくと、似た状況に出会ったときに、前回より少し早く、少し落ち着いて考えられるようになる。実務経験の価値は、こうした小さな変化の中にもあると思います。

職歴や肩書に、実務で培った力を重ねていく

Big4で働いた経歴は、その後のキャリアで武器になると思います。だからこそ、その環境でどんな力を身につけるかまで考えたい。

職歴について聞かれたときに、担当した仕事、難しかった論点、自分がどう考えて進めたかを具体的に話せる。そうなれば、勤務先の名前に加えて、自分自身の経験も伝えられます。

同じ組織でも、部門、担当業務、チームによって経験は違います。反対に、Big4以外にも、専門性の高い人から学び、自分で考えた仕事にレビューを受けられる環境はあるはずです。

自分が「レベルの高い環境」に価値を感じるのは、単に忙しかったり、難しい仕事を任されたりするからではありません。考え方を学べて、自分の判断を確かめてもらえて、次の仕事で試せるからです。

もしUSCPA取得後の職場を考えるなら、自分は勤務先の名前に加えて、次の点を確認したいと思います。

  • 自分で論点を整理し、考える機会があるか。決まった作業だけでなく、判断の過程にも関われるか。
  • レビューや相談の機会があるか。直し方だけでなく、なぜ直すのかを学べるか。
  • 仕事の目的や、その先の説明まで見えるか。自分の作業が何に使われるのかを理解できるか。
  • 経験の幅と深さを、継続して広げられるか。学びを振り返る余地も含め、無理なく経験を積めるか。

「何年いれば十分か」も、一律には決められないと思います。数年間じっくり実務を積む価値は大きいと感じますが、年数だけで力がつくわけではありません。

以前より、自分で整理できる論点が増えたか。相談するときに、自分の考えと根拠を添えられるようになったか。相手にわかる形で説明できるようになったか。

そうした変化で経験を見直すほうが、次に何を身につけたいかも見えやすくなると思います。

資格が広げた可能性を、自分で使える力に変えていく

USCPAを取ったことで、自分のキャリアの選択肢は広がりました。ただ、その選択肢を実際に歩いていく力は、資格取得後の仕事の中で身につけてきた部分が大きいと感じています。

論点を見つける。必要な情報を集める。自分なりの結論を持つ。レビューを受けて考え直す。相手に伝わる形に整える。

そこで身についた仕事の進め方は、同じ職場にいる間だけのものではありません。事業会社へ移る場合にも、専門性を深める場合にも、海外で働く場合にも、持っていけるものだと思います。

自分は今、そうした経験を事業づくりにも活かそうとしています。もちろん、独立は数ある選択肢の一つです。どの道を選ぶとしても、自分で考え、説明できる力は土台になると感じています。

資格は、可能性を広げてくれる。
その可能性を、実際に使える力に変えるのが実務経験です。

Big4のブランドは、その後のキャリアで確かに武器になる。でも、自分にとって本当に長く残るのは、そこで身につけた考え方や仕事の進め方だと思っています。

職歴としての強みを得ながら、自分の中にも「仕事の基準」を積み上げていく。自分がUSCPA取得後の実務経験に大きなメリットを感じるのは、その両方を得られるところです。

これから資格に挑戦するなら、合格後の経験についても少し考えておくとよいと思います。監査で企業の数字を確かめる力をつけたいのか。税務の論点を整理できるようになりたいのか。英語を使って海外に関わる仕事をしたいのか。

最初から進路を一つに決め切る必要はありません。それでも、「この資格を取って、どんな経験を得たいのか」という仮の答えがあれば、勉強の先にある目的や、職場を選ぶときの軸が見えやすくなると思います。

せっかく難関資格に挑戦するなら、合格後に「どんな経験を得たいか」まで考えておく。そうすることで、ブレずに進みやすくなると思います。

このブログとXでは、USCPA取得後のキャリア、監査・税務の経験、海外での仕事、そしてその先の選択肢について発信しています。これから実務経験を積もうとしている方や、次のキャリアを考えている方に、この記事が届けばうれしいです。


パラゴン|USCPA / CPA Australia

オーストラリア滞在通算約7年。現地の飲食ビジネスで店舗実務と経理を経験した後、Big4で監査、会計アドバイザリー、国際税務に従事。

現在は、日豪クロスボーダー事業「Paragon Global Partners(PGP)」を立ち上げ、日本の飲食店のインバウンド支援、豪州進出、日豪M&Aなど、日本と豪州をつなぐ飲食事業開発に取り組んでいます。

X・ブログでは「USCPAを取ったその先」をテーマに、資格、キャリア、海外事業づくりについて発信しています。

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