海外経験をキャリアで使える力に変える

USCPA

PARAGON / OVERSEAS EXPERIENCE & CAREER

海外経験は、帰国した瞬間に価値が決まるわけではない。

僕はオーストラリアに約7年滞在し、その間に会計学を学びました。現地の企業で経理の仕事をすることになり、会計業界に入りました。

ただ、その頃からCPAを取得して、監査法人や税理士法人で働くところまで見えていたわけではありません。

当時やっていたことと、今の仕事。その間には、資格取得や、その後に積んだ実務経験があります。振り返ると、オーストラリアでの経験は、それらを通じて少しずつキャリアの軸になっていきました。

だからこそ、海外にいた時間を「帰国後、すぐに何につながったか」だけで評価してしまうのは、少し早い気がします。

今回は、自分のオーストラリアでの経験を振り返りながら、海外経験をその後のキャリアにどうつなげていくかを書いてみます。今はまだ活かし方が見えていない方にも、考えるヒントになればうれしいです。

オーストラリアで学び、働いたことが、会計のキャリアの出発点になった

自分にとってオーストラリアは、英語を使って生活した場所であり、会計を学び、仕事として経験した場所でもあります。

今振り返ると、この「学ぶこと」と「働くこと」の両方があったことは大きかったと思います。会計が教科書の中だけの話ではなく、実際に会社の経営につながっていることを実感できたからです。

オーストラリアの飲食店をイメージした店内で、会計の本と経理資料が並ぶテーブル

たとえば飲食店の数字の向こうには、料理を作る人、接客する人、来店するお客様がいます。売上や費用は、そうした日々の動きから生まれます。

店舗実務と経理の両方に関わった経験は、自分にとって、事業と会計を結びつけて考える土台になっています。

とはいえ、当時からその価値を整理して説明できたわけではありません。「この経験を積めば、何年後にはこの仕事ができる」と、はっきりした地図を持っていたわけでもありませんでした。

将来のビジョンを持って戦略的に作ってきた経験というより、後から見えてきた可能性に繋げていった。僕の海外経験はそちら側だった思っています。

海外経験と、その後のキャリアの間にあったもの

オーストラリアで会計を学び、実務を経験。その経験がUSCPAの取得につながり、その後、監査法人、税理士法人へとキャリアがつながっていきました。

ここだけを並べると、最初から一つの道を計画していたようにも見えます。でも、実際には、後から振り返って初めてわかるつながりです。

海外での経験だけで、その後の仕事がすべて決まったわけではありません。資格の勉強をし、新しい実務を経験し、それまでとは違う立場から会計に関わってきました。

自分の場合、つながりは大きく三つあったと感じています。

1.会計を学び、働いた経験を、資格と掛け合わせた

自分には、資格を取る前に、オーストラリアで会計に触れた経験がありました。USCPAへの挑戦は、その経験と地続きにあったと思います。

海外で学んだことや、仕事で触れたことを、その場限りにせず、会計の知識をさらに積み上げる方向へ進んだ。その一つの形が、資格取得でした。

もちろん、海外経験を活かす方法が資格取得に限られるわけではありません。自分の場合は、会計を軸に深めていくことが、次の選択につながったということです。

2.経理から監査・税務へ、経験する立場を広げた

企業の中で経理をすることと、監査や税務の仕事をすることでは、求められる知識も、数字を見る目的も違います。

監査法人や税理士法人に進んでからも、新しく学ぶことはたくさんありました。それでも、企業の中で働いた経験がなくなるわけではありません。

新しい仕事に取り組むとき、それまでの経験は、理解するための手がかりにもなります。自分にとっては、会計という共通点を持ちながら、仕事の見方を広げていく過程でした。

3.英語と海外生活が、会計と結びついて残った

英語を使って会計を学んだこと。海外の職場で仕事をしたこと。現地で生活したこと。これらも、自分の経歴の中で別々に切り離されているわけではありません。

「英語ができる」「会計を知っている」「オーストラリアで働いたことがある」。一つずつではなく、組み合わせて見たときに、自分が次に取り組みたいことが見えやすくなりました。

今、自分が日本とオーストラリアをつなぐ仕事を考えているのも、その延長にあります。ただ、海外に行った時点で今のキャリアの状況を想定していたわけではありません。後から積んだ経験によって、以前の経験の使い道が増えてきたと感じています。

「海外にいた」より、「海外で何をしたか」を振り返る

海外経験という言葉は便利ですが、かなり広い言葉でもあります。

留学したのか。現地で働いたのか。何を学んだのか。どんな役割を担ったのか。同じ国に同じ期間いたとしても、残る経験は人によって違うはずです。

自分の経歴も、「オーストラリアに約7年いました」だけでは、何をしてきた人なのかは十分に伝わりません。

会計を学んだ。飲食企業で経理と店舗実務を経験した。その後にUSCPAを取得し、監査・税務に進んだ。そこまで話すと、海外にいた時間と、今の自分の仕事との関係が見えてきます。

海外経験をキャリアにつなげるときは、滞在歴を、自分が実際にやってきたことに分けて考える。まずは、それが大事だと思います。

大きな成果や特別な役職だけを探す必要もありません。日々担っていた仕事、繰り返し使っていた知識、以前よりできるようになったこと。その中にも、次に使える経験があるかもしれません。

逆に、「海外にいたから」という理由だけで、何かを身につけたことにしてしまうのも違うと思います。自分が実際にしたことを、具体的に振り返るほうが、相手にも説明しやすくなります。

今すぐ活かし方が見えなくても、経験の価値を決め切らなくていい

帰国後、思っていた仕事につながらなかった。英語を使う機会があまりない。周囲と比べて遠回りしたように感じる。そんなとき、海外にいた時間の意味を考えたくなることもあると思います。

ただ、今の仕事で直接使っていないことと、これからも使い道がないことは、同じではありません。

シドニーの写真と使い込んだノートを、新しい仕事のノートと並べて海外経験を振り返るイラスト

自分の場合も、海外で会計を学び、働いた経験だけを見ていたときと、資格取得や監査・税務の実務を重ねた後とでは、見え方が変わりました。

当時は特に意識することもなかった経験が、後から組み合わさって、一つの方向を示してくれる。海外経験には、そういう活き方もあると思います。

もちろん、時間がたてば自動的に評価される、という話ではありません。次に何を学び、どんな仕事に取り組み、どう説明するかによって、つながり方は変わります。

だから、「あの経験は役に立たなかった」と決める前に、今の自分の知識や関心と組み合わせて、もう一度見直してみてもよいと思います。

今は使っていない経験でも、次に積む経験との組み合わせで、意味が変わる可能性はあります。

海外経験を次のキャリアにつなげるための三つの問い

自分の経験を整理するなら、次の三つの問いに分けて考えてみます。

海外で、具体的に何をしたか

まずは事実を並べます。どんな分野を学んだか、どんな仕事を担当したか、どんな人と関わったか。

僕の場合は、「オーストラリアで会計学を学んだ」「現地の飲食企業で経理と店舗実務の両側を経験した」です。最初から立派な強みに言い換えようとせず、実際にやっていたことから始めます。

その経験から、今の自分に何が残っているか

知識、仕事の進め方、言語、業界への理解。あるいは、もっと学びたいと思った分野や、自分に合う働き方がわかったことかもしれません。

「海外経験で成長した」で止めず、何を以前より理解できるようになったのか、何なら具体的に説明できるのかまで考えると、経験の中身が見えてきます。

次に何を足せば、その経験を使えるか

今ある経験だけで、次の仕事に必要なものが全部揃っているとは限りません。

関連する実務を積む。知識を学び直す。必要なら資格に挑戦する。すでに持っている経験を使える仕事を探す。次に足すものは、人によって違います。

自分の場合は、USCPAの取得と、その後の監査・税務の実務経験が、海外での学びや仕事をさらに深めることにつながりました。

大切なのは、海外経験を一つの完成した実績として評価するだけでなく、これから何を積み重ねるための土台になるかまで考えることだと思います。

海外経験は、後からキャリアの大きな軸になることがある

オーストラリアで会計を学び、飲食企業で経理の仕事をした。その頃の自分には、今につながる道筋が、すべて見えていたわけではありません。

それでも、その経験がCPA取得につながり、監査法人や税理士法人での仕事につながった。さらに今は、会計・英語・飲食・オーストラリアという経験を、事業づくりにもつなげようとしています。

僕にとって、海外経験の意味は帰国したときに完成したものではなく、その後も変わり続けているものです。

海外経験は、それだけでキャリアになるわけではない。
でも、後から大きな軸になることがある。

振り返って大事だったと思うのは、海外に飛び出す行動力もとても大事です。しかし、実際にキャリアに効いてくるのは「そこで何を経験して、その後どうつなげたか」が大きいと思います。

もし今、海外経験の活かし方が見えていなくても、その価値を決め切る必要はないと思います。次に学ぶことや、次に選ぶ仕事によって、以前の経験が違う意味を持ち始めるかもしれません。

帰国したときに、キャリアの答えが出ていなくてもいい。僕自身も、海外経験で得たものを、これから何につなげていくかを引き続き考えていきたいと思います。


パラゴン|USCPA / CPA Australia

オーストラリア滞在通算約7年。現地の飲食ビジネスで店舗実務と経理を経験後、Big4で監査、会計アドバイザリー、国際税務に従事。現在は、日豪クロスボーダー事業「Paragon Global Partners(PGP)」を通じて、日本企業の海外展開と、豪州企業の日本進出を支援しています。オーストラリアでのビジネス・生活経験と、会計・税務の専門性を活かし、海外で挑戦する企業・個人に役立つ情報を発信しています。

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