
飲食店の経理に興味があります。一般的な会社の経理とは何が違うのでしょうか。店舗で働いた経験は経理にも役立つのか、実際の仕事ではどんな数字を見るのか知りたいです。
こういった悩みに答えます。
☑️この記事のポイント
- 飲食店の経理では、数字のすぐ裏側に店舗のオペレーションがある
- 売上・仕入れ・人件費は、現場で起きていることの結果として数字になる
- 店舗経験があると、数字の変化から現場を想像しやすくなる
- 一方で、現場を知っているだけでは経理業務はできず、会計の知識も必要
- 飲食業の経理は「数字だけを見る仕事」ではなく、事業を数字から理解する仕事でもある
私が最初に経理として働いたのは、日本の大企業でも監査法人でもありません。
オーストラリアの飲食企業でした。
そこでは経理だけではなく、店舗の現場も経験しました。
現在は監査、会計アドバイザリー、国際税務など、かなり違う立場から企業の数字を見る仕事を経験していますが、飲食企業で働いたときに印象的だったことがあります。
それは、飲食店の数字は現場との距離がとても近いということです。
売上、仕入れ、人件費。会計上は勘定科目ですが、店舗へ行けば、その数字が生まれている場面を実際に見ることができます。
今回は、オーストラリアの飲食企業で店舗と経理の両方を経験した立場から、飲食業の経理について感じたことを書いてみます。
飲食店の経理は、店舗で起きたことを数字にする仕事
飲食店でも、基本的な会計の考え方そのものが特別に変わるわけではありません。
売上があり、費用があり、その差によって利益が生まれます。
ただ、飲食業ではその数字が生まれる場面をイメージしやすいと感じました。
お客様が来店し、料理や飲み物を注文する。それが売上になります。
料理を提供するには食材が必要なので、仕入れが発生します。
料理を作るスタッフ、接客するスタッフが働けば、人件費が発生します。
店舗で毎日起きていることが、最終的には損益計算書の数字として表れます。
経理として数字を見るときも、その数字がどこから来ているのかを考えることになります。
飲食店の数字は、店舗の動きから生まれる

店舗の現場を経験していて良かったと思うのは、会計の数字を見たときに、その向こう側の動きを想像しやすかったことです。
たとえば売上という数字を見ても、店舗では一日の営業の結果です。
何人のお客様が来たのか。どんな商品が注文されたのか。忙しい時間帯はいつだったのか。そうした実際の営業活動の結果として売上ができます。
仕入れについても同じです。
食材や飲料を仕入れ、それを使って商品を提供します。数字だけを見れば費用ですが、店舗では実際の商品やサービスにつながっています。
人件費にも、店舗で働く人たちのシフトや営業体制があります。
こう考えると、飲食店の経理は単に数字を入力する仕事ではありません。
その数字が店舗のどんな活動から生まれているのかを理解できると、数字の見え方も変わってきます。
店舗経験が経理で役立ったこと
私は店舗と経理の両方を経験したので、「現場の人が何をしているのか」がある程度わかる状態で数字を見ることができました。
これは経理の専門知識とは少し違う力です。
たとえば経理から店舗へ何か確認するときも、その資料や数字を誰が、どのタイミングで作っているのかを想像しやすくなります。
店舗が忙しい時間帯もあります。現場では、お客様への対応や営業そのものが最優先になる場面もあります。
経理側から見れば「この資料が必要」と思っていても、店舗側には店舗側の仕事があります。
両方を経験すると、自分の仕事だけではなく、相手側のオペレーションも考えながら仕事を進めるようになります。
これは飲食業に限った話ではないと思います。
経理は会社のさまざまな部門から情報を受け取り、それを数字へ変えていく仕事です。
その相手がどんな仕事をしているのかを理解することは、経理として働くうえでも役立ちます。
一方で、現場を知っているだけでは経理はできない
店舗経験が役立ったからといって、現場を知っていれば経理ができるという意味ではありません。
実際に経理として仕事をするには、会計の基本的な知識が必要です。
取引をどう記録するのか。売上や費用をどう認識するのか。月や年度が変わるときに何を確認するのか。
店舗運営を理解することと、それを正しく会計へ反映することは別のスキルです。
私の場合はオーストラリアで会計学を学び、その後、現地企業で経理として働きました。
大学で学ぶ会計と、会社で使う会計は同じではありませんが、会計の基本を知っていることで実務を理解しやすくなる部分はありました。
経理を経験すると、店舗の見え方も変わる
面白いのは、店舗経験が経理に役立つだけではなく、経理を経験すると店舗の見方も変わることです。
店舗にいると、お客様へのサービスや、その日の営業に意識が向きます。
経理側から見ると、その営業が最終的にどのような数字になっているのかを見ることになります。
売上が多い日でも、費用も同じように増えているかもしれません。
忙しく営業していることと、会社として利益が出ていることは同じではありません。
現場では「よく売れている」と見える一方、経理では売上だけではなく費用も含めて見ます。
こうした視点を持てることは、飲食ビジネスを理解するうえでも大きいと思います。
飲食業の経理から身につく「事業を見る視点」

私は、飲食業の経理の面白さの一つは、数字と事業の距離が近いことだと思っています。
財務諸表だけを見ていると、売上や費用は数字として並びます。
でも店舗へ行けば、売上がどのように生まれているのかを見ることができます。
料理を作る。接客する。お客様が来る。仕入れをする。スタッフが働く。
そうした日々の活動の積み重ねが数字になります。
経理という仕事を、帳簿を作る作業だけではなく、「事業の結果を数字から見る仕事」と考えると、仕事の面白さも変わってくると思います。
その後、監査法人へ移って感じた違い
私はオーストラリアで経理を経験した後、日本へ帰国して監査法人へ転職しました。
経理では会社の中から数字を作りますが、監査では外部からその数字を確認します。
立場は大きく変わりました。
それでも、監査で企業の数字を見るときにも、「この数字は実際の事業のどんな活動から生まれているのか」と考えることは重要でした。
経理と監査の違いについては、経理から監査法人へ転職して感じたことで詳しく書いています。
海外の経理で英語はどのくらい重要だったか
オーストラリアで働く以上、当然ながら仕事では英語を使います。
ただ、自分の経験からすると、「英語ができること」と「経理の仕事ができること」は分けて考えた方がいいと思います。
英語だけできても、会計や経理のことが分からなければ仕事は進みません。
反対に会計知識があっても、周囲とコミュニケーションが取れなければ海外の職場では困ります。
必要なのは、完璧な英語というより、仕事を進めるために必要な英語と専門性の両方を少しずつ身につけることでした。
この点は、会計×英語はキャリアでどう役立つ?でも別の角度から書いています。
飲食業の経理が向いている人
飲食業の経理は、数字だけではなく事業そのものに興味がある人には面白い仕事だと思います。
店舗がどう動いているのか。売上がどこから生まれるのか。費用は何に使われているのか。
そうしたことに興味があると、帳簿の数字だけではなく、その背景まで見たくなります。
一方で、飲食が好きだからという理由だけで経理が向いているわけでもありません。
細かな確認、数字の正確性、期限までに処理することなど、経理として基本的な仕事をきちんと行う必要があります。
「飲食」と「会計」の両方に興味がある人にとっては、この二つを同じ仕事の中で見られる点が魅力だと思います。
まとめ|飲食店の数字を見るなら、現場も見る
飲食企業で店舗と経理の両方を経験して感じたのは、飲食店の数字は現場から離れて存在しているわけではないということです。
売上にはお客様と商品があり、仕入れには食材や飲料があり、人件費には実際に働くスタッフがいます。
経理では、それらを最終的に数字として見ることになります。
現場を知っていることは会計知識の代わりにはなりません。しかし、数字の背景に何があるのかを考えるうえでは大きな助けになります。
反対に、経理を経験すると、店舗の営業を見るときにも「この活動が最終的にどんな数字になるのか」という視点が加わります。
数字だけを見るのではなく、その数字を作っている事業を見る。
飲食業で経理を経験する面白さは、そこにあると私は感じています。


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